4ページ目/全7ページ


   「……サンジ君? 私の話、聞いてる?」

   ナミがサンジの顔を覗き込むように言った。間近で見るナミの整った顔はやはり美しい。

   「当然じゃ無いですか? やだな〜ナミさん」

   「そう、なら良いけど。もし何か問題を起こしたら1万べりー要求するわよ!」

   本当のトコロ、ぼんやりとしていて、サンジはナミの話をほとんど聞いていなかった。

   たぶん先ほどの、ゾロとの喧嘩で怒られているんだな〜とは思っていた。

   「とにかく危険だから、ゾロにはあまり近づかない方が良いわよ」

   ナミはとても真剣な表情だった。

   「心配してくれるなんて嬉しいな〜。ナミさん好きだ〜〜〜!」

   サンジが抱きつこうとしたら、顔面にナミの肘を入れられた。いきおいで、ロビンめがけて飛ばされたが、

   スルリとかわされ、サンジは床を抱いて寝るしか無かった。

   たしかにゾロは凶悪で危険なアホかもしれないが。自分がゾロとやりあって負けるとは思えなかった。

   心配される事も無いのだが? それとも、違う意味なのだろうか?


   サンジも最近、少し気づいた事があった。自分はゾロを<友達>だと思っていたが。

   (マリモは、オレを友達だとは思ってね〜のかもしれね〜な)

   (もしかすると、オレは嫌われているんじゃね〜のか? )

   (作ったケーキも奴は食わね〜し、話も全くしね〜モンな)

   (ナミさんの言うとおり、近づかね〜方が良いのかもしれねぇ)

   そう考えたら、胸の奥の方がぎゅ〜と絞られるように痛くなった。

   何だか、目頭と鼻の奥まで熱くなってきた。

   サンジは座り直すと、手に持っていたワイングラスをいっきに煽って空にした。

   すると、隣にいたロビンが飲んでいた水割りを手渡してくれたので、それもいっきに飲み干した。

   「あら、良い飲みっぷりね」

   ロビンが、さらに新しい酒を注いでくれる。

   (腐れマリモめ〜〜〜! てめぇ〜とは絶交だからな!)

   (土下座してあやまっても、もう手遅れだぜ!)

   友達かどうかも不明なのに、勝手にゾロと絶交を決めたサンジは、ヤケ酒を煽り始めた。

   美女2人もそれにつきあってくれたが、サンジの酒量が<可愛いお月様レベル>なら、

   彼女ら二人は<生きたブラックホール>だった。

   用意した酒をあらかた飲み尽くし、「おやすみなさい」と言い残し女性部屋にナミとロビンが

   去って行った頃、完全にサンジは酔い潰れていた。

   11日も間もなく終わろうとする夜更けのGM号の甲板には、グデングデンに酔って座り込むサンジと、

   何時間でも表情一つ変わらぬ様子で飲み続けられる――強靭な肝臓を持ったゾロが取り残されていた。

   暗雲立ち込める問題のアホ二匹とは対照的に、今夜の夜空は雲一つ無く、星はとても美しかった。



                                
             3ページ目へ戻る            5ページ目へ進む



            ワンピース小説目次へ進む